詩人の中原中也は、普段は大人しい性格の持ち主だったものの、とにかく酒癖が悪く、厄介な酒乱のエピソードも残っている。あるとき、文学仲間で酒を飲んでいる際、評論家の中村光夫と口論になった中也は、「殺すぞ!」と声を荒げ、手に持っていたビール瓶で中村の頭を殴りつけた。殴られた中村も、酔いが回っていたからか、平然としていたそうだが、このとき、飲みの場の家主でいつもは温厚な青山二郎が、「殺すつもりなら、なぜ縁ではなく横っ腹で殴った。卑怯だぞ!」と中也に向かって怒鳴りつけた。すると中也は、「俺は悲しい!」と床に突っ伏して泣きじゃくり、その泣き声に、部屋にいた誰もがどことなく物悲しくなり、中村の怒りも薄れていったという。