ほんとうのことというものは、ほんとうすぎるから、私はきらいだ──日本の作家、坂口安吾の随筆『恋愛論』(『日本文化私観―坂口安吾エッセイ選』)の一節。
恋愛について論じた随筆のなかで、恋は一時の幻であるというようなことは、たとえそれがほんとうだったとしても、若い人はそんなことを聞き流しておけばいい、ということを安吾は書いている。
ほんとうのことを言ったとしても、それはほんとうすぎて、だからなんだというほど無意味と言える。それは恋にかぎったことではなく、死についてもそうだと言う。
安吾は、次のように書いている。「ほんとうのことというものは、ほんとうすぎるから、私はきらいだ。死ねば白骨になるという。死んでしまえばそれまでだという。こういうあたりまえすぎることは、無意味であるにすぎないものだ。」
恋は幻だから、恋などするなと言っても仕方がないし、人はどうせ死ぬのだからさっさと死んだほうがいいというものでもない。ほんとうすぎて、かつそれが避けられないようなものは、なにも言っていないに等しい。