弱虫は、幸福をさえおそれるものです──昭和を代表する日本の小説家、太宰治の小説『人間失格』の一節。
この印象的な言葉は、こんな風に続く。「弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我をするんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。」
なにかを恐れて動けない人、繊細で傷つきやすい人は、誰もが憧れる「幸福」でさえも恐れてしまう。本来なら、柔らかく心地よいはずの「綿」でさえ、ときには鋭い棘のように感じてしまう。それは、傷つくことを恐れる心が自らを傷つけてしまうからだろうか。そして、それゆえに、幸福を手に入れたそばから怖くなり、早くに手放そうとしてしまうことさえあるかもしれない。
この「弱虫は、幸福をさえおそれるもの」という言葉からは、そんな人間の“弱さ”への、優しくも切ない眼差しが伝わってくる。